理事長挨拶
脳神経血管内治療学会は新しい時代へ  

 新型コロナ感染が何とか落ち着き、コロナ前の日常が戻ってきました。

 本年私共の学会は大きな変革を迎えます。私が就任当初のご挨拶でも公約として掲げましたいくつかの改革が、本年は形となって新たな第一歩を踏み出します。最も大きな改革は、法人格の変更です。今年を起点として、NPO法人(以後 NPO)から一般社団法人(以後 社団)に移行してまいります。新しい社団の理事長として、経緯、変更点、今後の動きなどについて、ご挨拶方々ご説明申し上げます。

 NPOと社団では、登記方法や管轄などは当然異なりますが、最大の違いは、NPOでは議事や選挙など全ての決まり事を、会員全体で審議、決定するのに対し、社団では、選出された代議員(社員)がそれを行うという点にあります。実は現在学術団体のほとんどが社団なので、会員の皆さんも他の所属学会などですでにお馴染みのことと思います。この代議員制度を取り入れることにより、審議が迅速かつ簡便となり、スムーズな学会運営が行えるというのが一番のメリットです。さらに各地域の声を集約し代表するのが代議員ですから、その選出方法についても、各地域(7選挙区)の在籍会員数に応じた数の配分を行うことで、地域格差のない、公平、平等な組織運営が実現できるように配慮しています。一方、これまで同様、運営の中枢となる理事会は置かれますが、理事の選出はこれまでの全体選挙ではなく、代議員会にて実施されます。また今回diversityなどを考慮した理事長指名枠を設け、時代の要求にあった運営体制を目指します。会員の皆様には2023年の学会から全員社団の会員に移動していただきます。特に手続きは不要ですが、今後の会費の納付先は社団となります。ただ、NPOはすぐに消滅解散するわけではなく、様々な手続きを経ながら徐々に移行してまいります。

 さて社団移行を機に、様々な改革を行なっています。

 一つは専門医試験制度の改革です。筆記と口頭実技という2段階の審査形式は踏襲しますが、そのやり方にいくつか改良を加えていきます。技術認定試験である我々の試験制度の本来の目的に立ち帰り、安全な手技を行える知識と技術を審査するための必要最低限の課題を追求してまいります。すなわち「落とす」ための試験ではなく、求められたことができれば全員通すぐらいの認定試験であることが理想です。そのために試験における審査のポイントを公開していることはご存知の通りです。受験生には、これらの情報を参考に、周到な準備とトレーニングをして試験に臨んでいただきたいと思います。虚血性脳血管障害の血管内治療が好例ですが、会員のsubspecialtyの多様化に伴い、学会としてさらに門戸を広く開け、脳血管内治療の裾野をさらに広げていきたいと思っています。

 次に地方会(支部会)の運営については、現在各地方会のやり方に任されていますが、ある程度統一性を持った運営形態を目指しています。これは代議員の選挙制度ともリンクするためですが、支部学術集会の開催はもちろん、教育セミナー、ケースカンファレンス、市民への啓蒙などの活動は、自由に積極的にやっていただきたいと思います。

 このほか臨床現場で必要不可欠と思われる、未認可の薬剤や新規デバイス、および保険承認してもらいたい技術などについては、積極的に行政に申請しチャレンジしてまいります。

 今回社団への移行に伴い、様々な大胆な改革が可能となります。従来、不足、停滞していた部分を見直し、新しい形を作り上げるという、私の座右の銘である「温故創新」を実現できるように努力してまいります。会員の皆様には何卒、ご理解いただき、ご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

 一般社団法人日本脳神経血管内治療学会理事長  宮地 茂