特定非営利活動法人日本脳神経血管内治療学会 利益相反指針        ダウンロード

特定非営利活動法人日本脳神経血管内治療学会 医学研究のCOI(利益相反)に関する指針
2011.11.23制定、2014.12.3改訂

Ⅰ.指針策定の目的
NPO法人日本脳神経血管内治療学会(以下学会)は、「広く市民に対して、脳神経血管内治療及び関連する領域の学術研究、広報、調査研究及び資格認定等を行うことで、その進歩及び普及を図り、もって学術文化の発展と国民の福祉に寄与する」ことを目的として設立されており、その目的を達するために、(1) 学術集会、研究発表会、講演会の開催等による脳神経血管内治療及び関連する領域の学術研究事業、(2) 機関誌及び論文図書等による脳神経血管内治療及び関連する領域の広報事業、(3) 脳神経血管内治療及び関連する領域の調査研究事業、(4) 国内外の関連する諸団体との連携事業、(5) 脳神経血管内治療及び関連する領域の専門医認定基準の策定、公表及び資格認定事業、(6) その他この法人の目的を達成するために必要な事業、を行っている。学術集会や講演、機関誌での発表に際しては、新たな医薬品・医療機器・技術を対象とする臨床研究が含まれている。
 医学研究者が営利企業と共同して医薬品・医療機器・技術を用いた臨床研究を行うことは、産学連携活動として重要であり、医療医学の進歩に貢献している。しかし、営利企業に深く関わった場合、教育や研究成果を社会に還元する公的利益と,産学連携に伴って得られる私的利益が相反する、利益相反conflict of interest(以下COI)と呼ばれる状態が起こり得る。近年、研究者個人のCOI を適切に管理し、被験者の安全や人権の確保と社会的責任を果たすことが求められるようになってきた。COIマネージメントは、研究者が所属する医科系大学や病院に加えて、研究成果を公表する学術集会を開催し、機関誌を発刊している学術団体にも指針の策定とその運用や遵守が求められている。
学会は,会員のCOIマネージメントを適切に行うことにより、医学研究の中立性・公明性を確保した状態で、研究結果の発表や普及を適正に推進することが,脳神経血管内治療の発展に貢献するという本法人の社会的責務を果たすことにつながると考え、「NPO法人日本脳神経血管内治療学会 医学研究のCOI(利益相反)に関する指針(以下指針)」を定める。
本指針は会員に対して、学会のCOI に関する基本的な考えを示すものであり,学会が行う事業に参加する会員などに、本指針を遵守することを求める。なおCOIの概念やその他の詳細は日本医学会のHP( http://jams.med.or.jp/guideline/index.html)などに記載されているので参照されたい。

Ⅱ. 対象者
COI 状態が生じる可能性がある以下の対象者に対し本指針を適用する。
  • 学会の会員
  • 学会の理事・監事および委員会を構成する者
  • 学会が行う学術総会で発表または機関誌において論文発表をする非会員
  • 学会が雇用する事務職員

    Ⅲ.対象となる活動
    学会が関わるすべての事業活動に対して,本指針を適用する。特に学会が開催する学術総会および講演会における学術発表、学会の機関誌脳神経血管内治療Journal of Neuroendovascular Therapyに論文発表を行う研究者には,発表する医学研究のすべてに本指針が遵守されていることを求める。
    機関誌 脳神経血管内治療 Journal of Neuroendovascular Therapyへの投稿にあたっては著者全員に自己申告書の提出・開示が義務付けられる。
    もし、著者のなかに企業所属の研究者が含まれる場合には、編集委員会は1)当該研究者の所属する企業名・2)当該研究への貢献内容・3)当該企業からの当該研究への出資額・4)発表結果の帰属先・5)研究結果の学会発表や論文発表の決定に関して当該企業が影響力の行使を可能とする契約の有無・6)当該研究結果に影響を与えうる企業からの労務提供の受け入れの有無等を確認し、総合的に論文の採否について判断すべきである。
  • 診療ガイドライン,マニュアルなどの策定
  • 臨時に設置される調査委員会,諮問委員会などでの作業
  • 市民に対する公開講座などにおける発表
  • 企業や営利団体主催・共催の講演会,ランチョンセミナー,イブニングセミナーなどにおける発表
  • なお、上記の活動における発表者が企業の正規職員の立場であると同時に大学・研究機関等での非常勤職員(例,講師,客員教授など)、派遣研究員、社会人大学院生である場合、記載する所属は前者の正規雇用の企業名(所属名,職名含む)だけを記載するか、或はそれに加えて大学・研究機関等の名称を併記することのいずれかが求められる。
    また、大学の寄付講座に在籍する研究者や奨学寄附金などの外部資金によって雇用されている大学・研究機関等の研究者などについては、発表に際しての所属や職名は所属施設・機関で使われる正式名称(特任教授,特命教授など)を記載しその資金を提供している企業名を「X寄付講座は、Y製薬の寄付金にて支援されている」「Department of X is an endowment department supported with an unrestricted grant from Y」のように併記すべきである。
     複数の企業などから資金提供されている場合には、細則に定めた基準額(年間200 万円以上/企業)を超えている企業については該当する企業名をすべて記載すべきである。

    Ⅳ. 申告・開示の対象期間
    申告及び開示の義務があるCOIとは役員就任時や発表時点から遡る過去3年間とする。
    なお、特定非営利活動法人日本脳神経血管内治療学会の会員は前年1 年間(1月~12月)におけるCOIに関する自己申告を毎年3月末日までに申告することが義務づけられているため、前々々年から前年までの連続3年間のCOI自己申告を完了していることをもって、COI自己申告の対象となる事業活動について必要な対象期間(3年間)の自己申告・開示を済ませているものとみなす。
    ただし、COIを自己申告した時点から役員就任や発表までの間に、新たなCOIが発生した場合には細則に定める規定に従い、すみやかに修正申告を行う義務を有する。

    Ⅴ. 開示・公開すべき事項
    対象者は,自身における以下の①~⑦の事項で、またその配偶者・一親等以内の親族・あるいは収入・財産を共有する者における以下の①ないし③の事項について、別に定める「NPO法人日本脳神経血管内治療学会 医学研究のCOI(利益相反)に関する細則(以下細則)」に記された基準に従い、自己申告によってCOI の正確な状況を開示する義務を負うものとする。なお、自己申告の内容については、申告者本人が責任を持つものとする。
    ① 企業や営利を目的とした団体の役員、顧問職
    ② 株の保有
    ③ 企業や営利を目的とした団体からの特許権使用料
    ④ 企業や営利を目的とした団体から、会議の出席(発表)に対し研究者を拘束した時間・労力に対して支払われた日当(講演料など)
    ⑤ 企業や営利を目的とした団体が原稿やパンフレット執筆に対して支払った原稿料
    ⑥ 企業や営利を目的とした団体が提供する研究費
    なお、企業や営利を目的とした団体からの寄付金などが、非営利法人(例,NPO)や公益法人(例,社団,財団)を経由して、受託研究費や研究助成費のような形で提供される場合には、それが高額であればあるほど研究成果についての客観性や公平性についての疑義が懸念されうる。このため、このような受託研究費や研究助成費の交付金額が細則に定めた基準額(年間1000万円)以上であり、企業や営利を目的とした団体が、当該受託研究費や研究助成の専らの出資者である場合には、その法人名・研究費名とともに出資者である当該企業名を記載して、本項(企業や営利を目的とした団体が提供する研究費)として自己申告すべきである。

    Ⅵ. COI 状態と回避すべきこと
    1)全ての対象者が回避すべきこと
    医学研究の結果の公表は、科学的な判断と公共の利益に基づいて行われるべきである。学会が行う事業に関係するものは、医学研究の結果を学会や論文で発表するか否かの決定、あるいは医学研究の結果とその解釈といった本質的な内容について、その研究に対する資金提供者や特定の企業の恣意的な意図に影響されてはならず、また影響を避けられないような契約書を締結してはならない。


    2)臨床研究の実施者が回避すべきこと
     臨床研究は、個人の生体試料を用いた研究から侵襲性のある介入研究まで多岐に渡っている。その中で侵襲性すなわち投薬や手術等、被験者に対するリスクが一定程度以上存在する医療行為を用いる介入研究が臨床試験である。臨床試験の中で、新しい医薬品の製造販売承認に際し申請に必要な資料収集のために行う臨床試験を「治験」といい、手術法や承認された医薬品の臨床上の有効性や安全性を研究者が企画発案し検証する介入研究を「研究者(医師)主導臨床試験」という。「治験」については、薬事法の下に、平成9年(1997年)の新「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(以下「GCP」)と略す」によって、企業主導あるいは研究者主導の「治験」という形でその実施方法が細かく規定されており、医療施設・機関等との契約の下にその有効性、安全性を確認する臨床試験 が行われている。
    一方、「研究者(医師)主導臨床試験」についてはヘルシンキ宣言及び「臨床研究に関する倫理指針」に基づいて実施するという基本方針により、被験者の生命と人権に対する自主的な配慮と高い倫理性が求められているが、その実施に薬事法の適用を受けないため、研究費の確保、独立した組織によるデータ収集・管理や統計解析、著者資格(貢献度)の評価などは実施する研究者個人の裁量に依存した状態にある。このため、もし、「研究者(医師)主導臨床試験」において研究者のCOIマネージメントが適切に行われなければ、倫理性や科学的信頼性が担保されないため、社会から疑義を招くことになる。
    「研究者(医師)主導臨床試験」が産学連携によって実施される場合に、当該研究の実施者は以下に記載する事項については特に留意して回避すべきであることが求められる。
  • 臨床試験への被験者の仲介や紹介にかかる報賞金の取得
  • ある特定期間内での症例集積に対する報賞金の取得
  • 特定の研究結果に対する成果報酬の取得
  • 研究結果の学会発表や論文発表の決定に関して、資金提供者・企業が影響力の行使を可能とする契約の締結
  • なお、産学連携に伴い当該研究実施施設が獲得する受託研究費は上記報賞金には該当しない。
    3)臨床研究の試験責任者や主任研究者が回避すべきこと
    「研究者(医師)主導臨床試験」が産学連携によって実施される場合に、当該研究の計画・実施に決定権を持つ試験責任者あるいは研究代表者(principal investigator)(多施設臨床研究における各施設の責任医師はこれに該当しない)は、当該研究に関わる資金提供者・企業との金銭的な関係を適正に開示する義務を負っており、以下に記載する事項については特に留意して回避すべきであることが求められる。
  • 臨床研究の資金提供者である企業の株式保有や役員への就任
  • 研究課題の医薬品,治療法,検査法などに関する特許権ならびに特許料の取得
  • 当該研究に関係のない学会参加に対する資金提供者・企業からの旅費・宿泊費の支払い
  • 当該研究に要する実費を大幅に超える寄附金などの取得.ただし、適正な契約に基づく場合は除外
  • 当該研究に係る時間や労力に対する正当な報酬以外の金銭や贈り物の取得
  • 当該研究結果に影響を与えうる企業からの労務提供(例,データ管理,統計解析,論文執筆など)の受け入れ
  • 当該研究結果が企業の利益(販売促進など)に直接的に結び付く可能性のある臨床研究の場合、当該企業からの共同研究者(正規社員)の受け入れ
    但し、上記の1ないし2に該当する場合であっても、当該研究者が当該臨床研究を計画・実行する上で必要不可欠の人材であり、かつ当該臨床研究が国際的にも極めて重要な意義をもつような場合には、一般社団法人日本脳神経外科学会COI委員会における審議を経て当該臨床研究の主任研究者や試験責任医師に就任することは可能とする。
    なお、2010年6月に発表された「臨床試験結果の医学雑誌における論文公表に関する共同指針(国際製薬団体連合会・欧州製薬団体連合会・米国研究製薬協業協会・日本製薬工業協会)」では、企業が依頼する臨床試験の公表論文の著者資格は、医学雑誌編集者国際委員会統一投稿規定(ICMJE Uniform Requirements for Manuscripts)に準じることが求められており、以下の3つの基準をすべて満たしていなければならない。
  • コンセプトとデザイン、もしくはデータ取得又はデータの解析と解釈に対する実質的貢献
  • 論文の起草、又は重要な内容に対する重大な改訂
  • 掲載されることになる版の最終承認
  • そして、公表論文の作成にあたりメディカルライター、統計専門家、その他の人々の助力を受けたが、これらの人々が著者資格の基準を満たさない場合には、これらの人々の関与に対しては、論文の謝辞において、適切に謝意を表し、その身元、所属、資金源及びその他の利害関係を記載することが求められている。

    Ⅶ. 実施方法
    1)COI委員会の役割
     学会は、COI 状態にある会員からの質問や要望に対応し、またCOI の管理・調査・審査を行い、さらに改善措置の提案や啓発活動を行うためにCOI 委員会を設置する。
    2)会員の役割
    会員は医学研究成果を発表する場合、当該研究実施に関わるCOI 状態を適切に開示する義務を負うものとする。開示の具体的方法については細則に基づいて行なう。本指針に反する事態が生じた場合には、COI 委員会が審議しその結果を理事会に上申する。
    3)役員等の役割
    学会の役員(理事・監事)は学会に関わるすべての事業活動に対して重要な役割と責務を担っているため、就任した時点でCOIの自己申告を行なう義務を負うものとする。その具体的方法については細則に基づいて行なう。
    また、役員は法人の事業活動を実施するなかで企業・団体と取り交わす契約などに関して、事業活動に伴う調査活動や発表の公明性・中立性において制約を設ける内容の取り決めを行ってはならない。
    理事会は、役員が学会のすべての事業を遂行する上で、深刻なCOI 状態が生じた場合、あるいはCOI の自己申告が不適切と認めた場合、COI 委員会に諮問しその答申に基づいて改善措置などを指示することができる。
    学術総会の会長は、当該学会において発表される研究成果が、本指針に沿ったものであることを検証し、本指針に反する演題については発表を差し止めることができる。なお,これらの対処については必要に応じてCOI委員会で審議し、その答申に基づいて会長が決定する。
    4)機関誌編集委員会の役割
    機関誌編集委員会は、投稿される論文が本指針に沿ったものであることを検証し、本指針に反する場合には掲載を差し止めることができる。また掲載後の論文が本指針に反していたことが明らかになった場合は、当該刊行物などに編集委員長名でその由を公知することができる。なお,これらの対処については必要に応じてCOI委員会で審議し、その答申に基づいて機関誌編集委員長が決定する。
    5)その他の委員会の役割
    その他の委員会は自らが関与する学会事業に関して,その実施が本指針に沿ったものであることを検証し,本指針に反する事態が生じた場合には,速やかに事態の改善策を検討する。なお,これらの対処については必要に応じてCOI委員会で審議し,その答申に基づいて当該委員長が決定する。
    6)臨床研究を行うにあたってのCOIに関する留意事項
  • 医師主導臨床研究は、対象症例数が多くなればなるほど多額の資金が必要となり、産学連携による研究費が資金源となる場合がある。このような場合には、医師主導臨床試験の資金源を学会発表や論文発表にあたって適切に開示または公表すべきである。
  • 企業からの奨学寄附金を資金源とする医師主導臨床試験の場合についても、当該企業が資金提供者と見なされるため、細則に定めた申告基準額以上であれば資金源(unlimited grant from company)として学会発表や論文発表にあたって適切に開示または公表すべきである。
  • 上記2項については、臨床データ集計・管理,統計解析,データ解釈ならびに論文作成において、資金提供者である企業関係者の介入がまったくないことを当該論文に、「The sponsor has no roles in study design, data collection, data analysis, data interpretation or writing of the report 」のように明記すべきである.
  • 臨床研究,特に侵襲性のある大規模な介入型研究は、実施計画書(プロトコール)に記載された年限を超えて長期間にわたり実施されることも少なくない。このため、産学連携による医学研究を行う場合には、主任研究者は①当該研究に資金を提供した企業名ないし団体名とそれから提供された金額を年度ごとに記録し、②研究の企画立案の時点から実施期間におけるデータや議事録についても記録し、研究終了報告から5年間、論文公表から3年間記録保管しておくことが望ましい。
  • 当該研究とは直接の関係がなくとも、当該研究内容に関係する企業からの奨学寄附金額などについても必要に応じて同様に記録保管しておくことが望ましい。

  • Ⅷ. 指針違反者への措置 1)指針違反者への措置
    学会のCOI委員会は、本指針に違反する行為に関して審議する権限を有し、その審議結果を理事会に答申する。その答申に基づいて重大な遵守不履行に該当すると判断した場合には、理事会はその遵守不履行の程度に応じて細則に定める措置を取ることができる。
    2)不服の申立
    被措置者は、学会に対して不服申立をすることができる。学会がこれを受理したときは倫理委員会において再審理を行う。
    3)説明責任
    学会は、自ら関与する事業において発表された医学研究に関して。本指針の遵守に重大な違反があると判断した場合には、COI委員会および理事会の協議を経てこれを公表し社会への説明責任を果たす。

    Ⅷ. COI自己申告書およびそこに開示されたCOI 情報の保管・管理
    細則に基づいて提出されたCOI自己申告書およびそこに開示されたCOI 情報は、学会事務局において理事長を管理者とし個人情報として厳重に保管・管理する。

    Ⅸ. 指針運用規則の制定
    学会は本指針を実際に運用するために必要な細則を制定する。

    Ⅹ. 施行日および改正方法
    社会的影響や産学連携に関する法令の改変などにより、個々の事例によって本指針の一部に変更が必要となることが予想される。学会は、原則として2年毎に本指針を見直し、理事会の決議を経て本指針を改正することができる。

    附則
    1 本指針は2012年5月1 日より施行する。
    2 2014年12月3日改訂。
     
    第33回 学術総会 WFITN2017