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脳腫瘍の術前塞栓術

脳腫瘍の術前塞栓術とは

脳腫瘍の手術をより安全に行うための治療法として、手術に先んじて脳腫瘍を栄養する血管にカテーテルを誘導し、詰めておく治療です。

術前塞栓術の目的

脳腫瘍には多くの血管が栄養を送っているため、手術中に大量出血する可能性があります。腫瘍に栄養を送る血管をあらかじめ詰めることで、手術中の出血を減少させる効果が期待できます。

未破裂動脈瘤の場合

術前塞栓術の対象

一般には髄膜腫と呼ばれる良性腫瘍が術前塞栓術の対象になりやすいですが,個別の脳腫瘍における術前塞栓術の必要性についてはカテーテル治療の専門家と脳腫瘍手術の専門家が相談をして決定します。ご自身やご家族が脳腫瘍手術を受ける際に術前塞栓術が必要になるかどうかについては主治医によくご確認、ご相談ください。

破裂脳動脈瘤の場合

術前塞栓術の方法

この治療は以下の手順で行われます:

  • 全身麻酔で行う場合と局所麻酔で行う場合があります
  • 手首ないし足の付けねから治療用のカテーテルを誘導します
  • レントゲンを見ながら、腫瘍近傍の血管まで慎重にカテーテルを進めます
  • カテーテルから塞栓物質を注入して、血管を詰めていきます
  • 塞栓物質としてはNBCAと呼ばれる液体塞栓物質の他、1mm以下の径のゼラチン状の粒子、金属製のコイルなどを用います
  • カテーテルを抜去し、刺入部の血管を圧迫して止血します。
  • 治療後は穿刺部の安静が必要となります
  • 軽度の発熱や痛みが出現することがあります
  • 予定された手術までの期間は医師の指示に従ってください

術前塞栓術の利点と欠点

術前塞栓術を受けると前述の如く術中の出血量が減少し,以下のような効果が期待できます。

1.  利点

  • 手術視野の改善
  • 手術時間の短縮
  • 手術の安全性向上

一方で,脳腫瘍塞栓術に特有の合併症として以下のものに注意が必要です

2.  欠点(リスク)

下記のような脳カテーテル治療の一般的なリスクがあります。その他にも患者さんごとに起こりうるリスクが異なることがありますので、主治医とよく相談して治療を受けてください。

  • 脳神経の合併症:腫瘍近傍の血管を損傷して出血すると,脳出血をきたすことがあります。また、塞栓物質が正常の脳を栄養する血管に入ってしまうと脳梗塞をきたすことがあります。いずれも運動障害、言語障害などの後遺症につながる可能性があります。
  • カテーテル挿入部の出血
  • X線被曝による影響:脱毛、皮膚障害など

よくあるご質問(FAQ)

脳腫瘍の術前塞栓術から摘出術までの期間はどのくらいですか?

対象となる脳腫瘍や治療を受ける施設によって差がありますが,一般的には脳腫瘍摘出術の1-7日前に塞栓術を行うことが多いです。

治療を受けない選択肢はありますか?

・塞栓術を行わずに直接腫瘍摘出術を行うことも可能です。ただし、その場合は手術中の出血が多くなり、手術がより困難になる可能性があります。
・腫瘍の種類や部位,行いたいと考えている手術のやり方によって術前塞栓術を行う方が良い場合もあれば、必要性がないこともあります。