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慢性硬膜下血腫

慢性硬膜下血腫とは

慢性硬膜下血腫とは、脳の表面と頭蓋骨の間にある「硬膜」と呼ばれる膜の下に、ゆっくりと血液がたまる病気です。この液状の血液が脳を圧迫して、以下のようなさまざまな症状を引き起こします。

  • 頭痛
  • ぼんやりする、物忘れがひどくなる (認知症状)
  • 手足の動きが悪くなる、しびれる (麻痺症状)
  • ふらつく、歩きにくくなる
  • 意識がもうろうとする (意識障害)

主な原因は頭を打ったこと(頭部外傷)です。ただし、しりもちをついたり、転んだり、軽く頭をぶつけた程度でも、高齢の方では発症することがあります。高齢者や血液をさらさらにする薬(抗凝固/抗血小板薬)を内服されている方, アルコールを多く飲まれる方は発症するリスクが高いです。血腫は数週間〜1ヶ月ほどかけて徐々にたまるため、症状も少しずつ出ることが多いです。

慢性硬膜下血腫に対する中硬膜動脈塞栓術の目的

慢性硬膜下血腫により脳が圧迫され、症状が出現した時には頭蓋骨に小さな穴を開けて、たまった血を洗い流します。溜まっている血液による圧迫が取れると症状は速やかに改善することが多いです。9割の方が手術で治癒しますが、10人に1人くらいの割合で再発し、中には何回手術しても再発を繰り返す慢性硬膜下血腫もあります。再発を繰り返す症例では、血腫がたまっている場所の周りに、新しくて弱い血管(もろい血管)ができています。そこから少しずつ血がにじみ出て、再び血腫が大きくなるため、この血管にカテーテルを誘導して液体塞栓物質で閉塞します。

未破裂動脈瘤の場合

慢性硬膜下血腫の中硬膜動脈塞栓術の対象と方法

この治療の対象は主に再発を繰り返す慢性硬膜下血腫の患者さんです。

  • 手術しても繰り返し血腫がたまる人
  • 体力がなく、繰り返しの手術が難しい高齢の方
  • 出血リスクが高く(抗血栓薬内服、アルコール多飲など)、再発を強く避けたい人

が主な対象となります。

この手術は、足の付け根や手首の血管からカテーテル(細い管)を入れて、頭の血管(中硬膜動脈)まで進めていく方法です。

手術の流れ:

  1. 足の付け根や手首の血管からカテーテルを入れる
  2. 脳の「中硬膜動脈」という血腫の出血のもとになっている血管に細いカテーテルを誘導
  3. そこに接着剤のような薬や小さな粒やるいは金属コイルなどを用いて血管をふさぐ血流を止めることで、血腫の原因になっているもろい血管に血が流れなくなり、再発を防ぐことができます。
破裂脳動脈瘤の場合

中硬膜動脈塞栓術の利点と欠点

再発を繰り返す慢性硬膜下血腫の患者さんに対する塞栓術は、穿頭手術を繰り返すより再発リスクを低減することが明らかにされています。

慢性硬膜下血腫の方は高齢の方が多く、動脈硬化が強い場合目的とする血管にカテーテルを誘導困難な場合があり、塞栓術を断念せざるを得ない場合があります。また塞栓術により脳梗塞や神経障害等の危険性がわずかにあることが挙げられます

よくあるご質問(FAQ)

慢性硬膜下血腫に対して最初から塞栓術を行うほうが良いのでは?

中硬膜動脈塞栓術の主な対象は再発症例です。穿頭手術で9割近くの方が治癒もしくは改善し、比較的確立された安全な治療であるため、まずはそちらの治療を優先します。