脳動脈瘤について
脳動脈瘤とは
脳動脈瘤とは、脳の血管(動脈)の一部が風船のように膨らんで、こぶのようになった状態を指します。この「こぶ」が破裂すると、「クモ膜下出血」という命に関わる重篤な状態を引き起こします。
脳ドックなどで偶然見つかることもあり、成人の約2〜4%に存在するとされています。 従って、誰にでも出来る可能性がある病気です。 クモ膜下出血を発症する前に、早期発見し適切な治療を行うことで「守れる命」が増えています。不安なことは遠慮なく担当する医師や医療スタッフにご相談ください。
正常な脳血管

脳動脈瘤ができた血管

破裂して出血した状態

カテーテル治療のイメージ

脳動脈瘤の治療の目的
未破裂動脈瘤の場合
動脈瘤の状態によっては経過観察も可能です。部位や大きさにも寄りますが、破裂する確率は平均すると年間1%前後と言われています。
経過観察中に大きくなる・形が変わるなどの変化があった場合は出血のリスクは高いと想定されます。また動脈瘤が増大してくると脳神経への圧迫が生じて様々な神経の症状が生じる可能性があります。

破裂脳動脈瘤の場合
再び出血しないように、できる早く手術を行って止血処置を行うことが最も重要です。破裂脳動脈瘤にも、カテーテル治療(コイル塞栓術)や開頭手術(クリッピング術)が行われます。どちらの治療も「再出血を防ぐ」ことが目的です。
患者さんの状態や動脈瘤の場所によって最適な方法が選ばれます。一度クモ膜下出血を起こすと、3人に1人は亡くなり、3人に1人は後遺症が残ると言われています。また再び破裂すると非常に危険(致死率は約50-70%)なので、できるだけ早く再出血を防ぐ治療が必要です。

脳動脈瘤治療の対象
未破裂脳動脈瘤の場合でも、大きさ、形状、部位などによって将来的な破裂のリスクが高いと判断された場合には、予防的な治療が推奨されます。また、すでに破裂してくも膜下出血を起こした場合は、すべての患者さんが早期に治療の対象となります。
年齢や体の状態、動脈瘤の場所・形・大きさ、医師との信頼関係が重要です。「動脈瘤を治す」だけでなく「安心して暮らす」ことを大切にして、担当する医師と一緒に治療方針を決めていきましょう。

脳動脈瘤治療の方法
脳動脈瘤に対する主な治療方法には以下の2つがあります。 現代ではカテーテルを用いた低侵襲な治療で予防や再出血の防止が多くの場合で可能となっています。
カテーテル治療(脳血管内治療)
足の付け根や手首の血管から細い管(カテーテル)を脳の血管まで挿入し、プラチナ製のコイルや金属メッシュのステントを使って動脈瘤内の血流を遮断する方法です。頭を開けずに治療できるため、身体への負担が少なく、回復が早いのが特長で、大きく分けると以下の3種類の方法があります。
- 動脈瘤内塞栓術(コイルや金属メッシュをこぶの中に入れて血流を遮断します。ステントや風船を併用する方法があります)
- フローダイバーターステント留置術(目の細かい筒状の金属メッシュをこぶの土台となっている血管に貼り付けて、こぶに入る血流を減らすことで血栓化させます)
- 母血管閉塞術(前者2つの方法で治療できない場合に選ばれることが多いです。血管の血流を遮断する方法です)

開頭手術(クリッピング術)
頭蓋骨を開けて、顕微鏡を見ながら動脈瘤の根元にクリップをかけて血流を遮断する方法です。

脳動脈瘤カテーテル治療の利点と欠点
当学会では体への負担が少ない「カテーテル治療」を主に扱っておりますのでカテーテル治療の流れ、利点と欠点を説明します。
カテーテル治療の流れ

局所麻酔または全身麻酔で、足の付け根や手首などの血管からカテーテル(樹脂で出来た細いホースのようなもの)を挿入します

レントゲンを見ながら脳の血管までカテーテルを誘導します

動脈瘤内にコイルを留置する、血管にステントを留置するなどを行い、動脈瘤への血流を減らします

レントゲンで確認しながら終了します

術後は数日の安静と画像検査を行って問題なければ退院となります
カテーテル治療の利点
- 開頭せずに済むため身体への負担が少なく、高齢の方や持病のある方でも治療を受けやすい
- 入院期間が比較的短く、早期の社会復帰が可能
カテーテル治療の欠点
- 動脈瘤の形や位置によっては、カテーテル治療が難しい場合がある
- 一部の症例では再治療が必要となることがある
- ステントを使用した場合、血をサラサラにする薬(抗血小板剤)を長期間内服する必要がある
よくあるご質問(FAQ)
動脈瘤が破れるとどうなるの?
「クモ膜下出血」と呼ばれる状態になります。「バットで殴られたような」突然の激しい頭痛、意識障害、嘔吐、けいれんなどを伴うことがあり、命の危険があります。
動脈瘤が見つかっても、治療せずに様子を見ることはできますか?
はい。動脈瘤の状態によっては経過観察が適切な場合もあります。定期的な画像検査(MRIやCT)で大きさや形の変化をチェックします。大きくなると破れて出血するリスクが高まります。破裂した場合、命に関わる危険があり、早期発見と管理が重要です。
カテーテル治療は安全ですか?
高度な技術が必要ですが、経験豊富な医師が行えば安全性は高く、国内データでは約98%の高い治療成功率が報告されています。脳梗塞や出血など、まれに合併症がありますが、最新の医療ではリスクは年々低下しています。
治療後に再発することはありますか?
一部の症例で再発が見られることがありますが、定期的なフォローアップで早期発見・再治療が可能です。
治療にはどれくらいの入院が必要ですか?
未破裂の場合は5〜7日程度、破裂例では2週間以上の入院が必要となることがあります。
カテーテル治療は痛みはありますか?
多くの場合、全身麻酔または眠くなるお薬を用いながらの鎮静下で行います。穿刺部(針を刺すところ)も小さいことから治療中に痛みを感じることはほとんどありません。
治療を受けるかどうか迷っています。
ご不安は当然です。納得いくまで主治医と相談し、必要に応じてセカンドオピニオンなど活用してください。