宮地 茂 新理事長よりご挨拶申し上げます。
   

 この度日本脳神経血管内治療学会(以後本会)の4代目の理事長を拝命致しましたので、一言ご挨拶を申し上げます。

 我が国の脳血管内治療の学会としての組織は、1982年に私の恩師でもある名古屋大学脳神経外科の故 景山直樹教授が、欧州で既に始まっていたこの治療の将来性を見越して、日本脳神経血管内手術法研究会として立ち上げたのが発端であります。最初は数十人の同志で始まった研究会は名古屋で4回開催された後に持ち回りとなり、第14回より学会に昇格し、2007年にはNPO法人化して現在に至っています。

 私自身がこの治療の専門医を目指した頃は、血管撮影はフィルムを用いた連続撮影であり、塞栓物質は離脱式バルーンとNBCAしかない時代でした。適応は極めて限られ、治療成績も決して芳しいものではありませんでした。

 しかし40年の時が経て、我が国の脳血管内治療はめざましい発展をとげました。現在多くの領域の外科治療において、従来の観血的治療から血管内治療へシフトしてきていますが、私たちのジャンルでも、特に脳動脈瘤と頚部頚動脈狭窄は半数以上が血管内から治療が行われています。さらに脳塞栓症に対する血栓回収療法の需要は有効性の認知とともに非常な勢いで需要が伸びており、実施医の養成が追いついていないのが現状です。また硬膜動静脈瘻や動静脈奇形の治療についても、塞栓物質の進歩や治療技術の進化により根治率が一層高まり、新しい時代を迎えています。

 このように今や脳血管内治療は、脳卒中医療の重要な治療modalityとして、また脳神経外科手術の治療オプションの柱として、その位置付けは確立されました。治療の有効性や安全性も飛躍的に向上し、認知度が高まるに連れて、国民が求める低侵襲医療の代表の一つとなりました。これまでの継続的なデバイス、技術の開発と、専門医制度を含む治療医の質の向上に努めてきたことが、やっと実を結んだと言えます。そして本会は現在4,000名以上の会員数、1,800名もの専門医を有する大所帯の学会組織となり、コンスタントに会員は増加しています。この意味では、本会はこれまでの右肩上がりの急激な成長期から、ゆるやかな発展を継続する円熟期を迎えたと思います。組織が巨大化して行く中で、治療医の質の担保は重要なポイントです。今後この手技を習得したい若手はさらに多く加入してくるでしょう。特に専門医、指導医のみなさんには資格者としての自覚と向上心を持ち、知識、技術に磨きをかけて教育、指導をするという姿勢が求められます。層の厚い指導体制で、多くの後進が正しく適切に育って行く環境づくりをし、この治療の恩恵を一人でも多くの患者さんが享受できるようにしなくてはなりません。

 このような昇竜のごとき勢いは喜ばしいことですが、その追い風に乗じて、無理な適応や無謀な治療戦略で行えば合併症が増え、国民からの信頼は失われるでしょう。今後のこの治療の発展のためには会員の皆さんの謙虚で真摯な努力が必要です。また我々の領域では海外からの輸入されたデバイスや技術が多いですが、ぜひ我が国から発信できるように研究、臨床活動の質とactivityをあげていかねばなりません。

 脳血管内治療におけるブレイクスルーはこれからもどんどん起こり、進歩のあゆみは止まらないでしょう。これまで発展してきた本会を、さらにギアアップして新ステージへ飛躍させるために、皆さんと一緒に盛り上げてまいりましょう。

 よろしくご協力、ご支援のほどお願い申し上げます。

宮地 茂 (愛知医科大学脳神経外科)

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