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 RESAT2002(Retrospective Study of Endovascular Subarachnoid Aneurysm Treatment)

Lanset誌に掲載された、クモ膜下出血(破裂脳動脈瘤)に対する血管内コイル塞栓術の優位性を証明した International Subarachnoid Aneurysm Trial (ISAT)報告を受けて、平成15年3月の脳卒中の外科学会で国内主要施設の集計データが発表されました。ISAT報告は長期間の周到な準備と厳密な試験により得られたProspective Randomized Conrolled Study(レベル1)であり、RESATは各施設のデータを単に集計したCohort study(レベル3)ですが、その結果は貴重な情報であるため公表することにしました。

 

破裂脳動脈瘤塞栓術多施設共同研究
RESAT2002(Retrospective Study of Endovascular Subarachnoid Aneurysm Treatment)

神戸市立中央市民病院脳神経外科 坂井信幸、三重大学医学部脳神経外科 滝 和郎

目的
我が国でGDCが認可された1997年から6年を経過した。ISAT報告を受け、我が国における破裂脳動脈瘤に対する治療方針を定めるために、国内の治療の実態をまず明らかにすることが重要と考える。導入以来積極的に脳動脈瘤塞栓術に取り組んできた20施設からの報告をまとめ報告する。
参加施設(担当医、所在地)

1中村記念病院(瓢子敏夫、札幌市)
2広南病院(高橋 明、江面正幸、仙台市)
3新潟大学(小池哲雄、伊藤 靖、新潟市)
4筑波大学(松丸祐司、つくば市)
5国立水戸病院(園部 眞、水戸市)
6千葉県救急医療センター(小林繁樹、千葉市)
7虎ノ門病院(根本 繁、東京都)
8富山医科薬科大学(桑山直也、富山市)
9名古屋大学(根来 真、宮地 茂、名古屋市)
10岐阜大学(郭 泰彦、吉村紳一)
11三重大学(滝 和郎、阪井田博司、津市)
12和歌山医科大学(寺田友昭、和歌山市)
13国立循環器病センター(中原一郎、坂井信幸、村尾健一、吹田市)
14大阪市立総合医療センター(小宮山雅樹、大阪市)
15神戸市立中央市民病院(坂井信幸、黒岩輝壮、神戸市)
16岡山大学(杉生憲志、岡山市)
17徳島大学(佐藤浩一、徳島市)
18福岡大学筑紫病院(風川 清、筑紫野市)
19久留米大学(安陪等思、広畑 優、久留米市)
20琉球大学(兵頭明夫、西原町)
対象
1997年にGDCが国内で認可されて以来、上記施設および関連施設で施行された脳動脈瘤塞栓術は4,064例、うち破裂14日以内の急性期破裂脳動脈瘤塞栓術が1,700例であった。開頭手術(neck clipping)と比較するため、母血管を温存する瘤内塞栓術1,488例を検討の対象とした。
方法
脳動脈瘤塞栓術の方法(抗凝固療法、使用カテーテルやコイル、術後管理など)は施設によりまた時期によりさまざまであるが、2施設を除き開頭clippingを優先し何らかの理由で良好な聖跡が期待できない場合に血管内治療を選択してきた。
調査項目
・期間中脳動脈瘤塞栓術 ・治療企図数/治療数
・破裂脳動脈瘤塞栓術  ・重症度/退院時GOS
・瘤内塞栓術      ・術中合併症
・年齢         ・治療完了後再出血
・部位         ・再治療
・治療日
各施設からアンケート方式により調査項目の結果を収集して集計し、1994年の日本脳卒中の外科学会で行われた全国11施設における前向き登録の報告(斉藤 勇・他、脳卒中の外科23:251,1995、以下PCS94)を国内の開頭クリッピング手術の代表的成績として比較検討した。

結果
RESATとPCS94の比較
1) 年齢
   40歳未満=6%, 40-49歳=13%, 50-59歳=26%, 60-69歳=22%,
   70-79歳=22%, 80歳以上=11%
 
  RESAT PCS94
70歳未満 67% 81%
70歳以上 33% 19%
   血管内治療は70歳以上の高齢者を多く担当している
2) 部位
   ACA=24%, MCA=5.5%, ICA=30%, Batop=18%, BAothers=9%, VA=9%,others=3.5%
 
  RESAT PCS94

前方循環
内頸動脈系

59.5% 90.3%
後方循環
椎骨脳底動脈系
40.5% 9.7%
   血管内治療は後方循環(椎骨脳底動脈系)を約4割担当している
3) SAH重症度
   H&K Grade I=11.1%, II=33.1%, III=24.5%, IV=21.9%, V=9.5%
 
SAH Grade RESAT PCS94
I-III 68.6% 72.2%
IV-V 31.4% 27.8%
   血管内治療はGrade IV+Vがやや多いが、重症度分類にはほとんど差がない
4) 治療日
 
  RESAT PCS94
Day 0 45% 47%
Day 1-3 37% 40%
Day 4- 18% 14%
   治療日には差がなく、いずれも第3病日までに約85%が治療されている
5) 治療成績
 -1) overall results
 
GOS

RESAT
n=1488

PCS94
n=458
GR 59.8& 64%
MD 13.2 11
GR+MD 73.0 75
SD 10.7 9
VS 4.1 4
D 12.6 12
  全体の治療成績はほぼ似かよっている。
 -2)Grade I-III
 
  RESAT PCS94
n/operation 1021/1488 331/458*
n/admission   353/525
GR 74.5% 71%
MD 12.3 9.6
GR+MD 86.8 80.6
SD 5.2 5.7
VS 1.2 2.5
D 6.8 10.5
     * PCS94のデータは手術を行った331例のデータ
  Grade I-IIIの層別解析では、家庭復帰率(GR+MD)、死亡率いずれもRESATがPCS94を上回った
 -3)Grade IV-V
 
  RESAT PCS94
n/operation 467/1488 127/458*
n/admission   172/525
GR+MD 41.3% 48.0%
SD+VS 33.5 28.4
D 25.5 23.6
     * PCS94のデータは手術を行った127例のデータ、172例のGrade IV+V 172例のうち127例が開頭手術を受けた
治療を行ったGrade IV+V の成績はPCS94が上回った。ただしPCS94登録期間中のGrade IV+V 172例全体では、GR=26.1%, MD=10.5%,D=40.1%と報告されている。
RESAT期間中にGrade IV+Vの保存的治療数および合計治療結果のデータはない。

RESATとISATの比較
A)重症度
 
SAH Grade RESAT ISAT
I 11.1% 63%
II 33.1 25
III 24.5 6
IV 21 4
V 9.5  
     ISATとRESATは患者の重症度は際だって異なっており、軽症のクモ膜下出血患者がRESAT(44.2%)に比べISAT(88%)で圧倒的に多い
B)大きさ
 
  RESAT ISAT
-5 mm 84.6%  51%
6-10 mm 41
11-24 mm 14.4  8
25< mm 0.9
     RESATは径10mm以上の大型動脈瘤を約2倍治療している
C)技術的成功
 
  RESAT ISAT
completed 96.2% 92.5%
failed 3.8 7.5
     技術的成功率はRESATが高いが、不成功例の分析データはない。またこの中には合併症は含まれていない。
D)再出血(死亡)
 
  RESAT ISAT
治療前 評価せず 14(7)
1-30日 15(8) 20(10)
1-12月 13(3) 6(5)
1年 - 3(0) 2(0)
     RESATでは治療前の破裂は評価しなかった。RESATもISATも1カ月以内の再出血は約半分が死亡につながっている。REATでは1カ月以降の再出血での死亡率は低い。
E)再治療
 
  RESAT ISAT
coiling 4.1% 4.9%
clipping 3.2 7.6
     再治療率はRESATが低い。RESATにおける再治療は、早期のものを除けば経過観察時の再開通に対するものが多いため悪化例はまれであった
F)治療成績(Grade I-III)
 
mRS RESAT* ISAT**
0 74.5% 20.0%
1 28.7
2 12.3 25.9
0-2 86.9 74.6
3 5.2  9.9
4 3.0
5 1.2 5.0
6 6.8 7.5
    * RESATは、GOSなのでmRS=0+1をGR、3+4をSDとした
    **ISATはGrade I-IIIが96%を占めるため、2カ月後の全体成績を示す
軽症と中等症(Grade IIIまで)の成績の比較で、RESATがISATを上回った

RESATの報告
・ 治療合併症
 
  後遺症 死亡 合計
出血性 0.8% 0.9% 4.4%
虚血性 3.2 0.5 7.4
その他 0.4   1.1
合計 4.4 1.4 12.8
     破裂脳動脈瘤の瘤内塞栓術の治療合併症は死亡1.4%, 後遺症4.4%であった
結果のサマリー
第34回 学術総会 WFITN2017
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  RESAT PCS94 ISAT
n 1488 458 1078
70歳以上 33% 19%  
後方循環 46% 9.7% 2.7%
Grade IV+V 31.1% 27.8% 4%

GR+MD(全体)

73.5% 75% 74.6%

GR+MD
(Grdde I-III)

86.9% 80.6%  
技術的成功 96.7%   92.5%
再出血 3.14%