Wingspanステントシステムの承認と適正使用に関するお知らせ 2013.12.21  



 
日本脳神経血管内治療学会会員各位
                                                   NPO法人日本脳神経血管内治療学会

日本ストライカー社のWingspanステントシステムが、本年11月22日に薬事承認されました。
同日、厚生労働省から本学会宛に「医療機器ウィングスパン ステントの適正使用について」という文書が届いています(資料)。
本文書は、日本脳卒中学会、日本脳神経外科学会にも同時に届いており、日本脳卒中学会から適正使用に関する文書が公表されました(資料)。
これらを受けて日本脳神経血管内治療学会は、会員へのお知らせをまとめました。
今後、保険償還(2014年7月の見込み)開始までに、製品の紹介、適正使用および市販後調査に関する情報が提供されます。
日本脳神経血管内治療学会会員、特に本品の使用者は、機器の添付文書、日本脳卒中学会を中心に定められた「頭蓋内ステント(動脈硬化症用)適正治療指針」の内容を遵守し、脳卒中治療のさらなる向上に努めて頂きますようお願い申し上げます。


Wingspanステントシステム
使用目的
本品は、頭蓋内動脈狭窄症に対するバルーン拡張式血管形成術用カテーテルを用いた経皮的血管形成術において、以下の場合に使用する。
 ・血管形成術時に生じた血管解離、急性閉塞または切迫閉塞に対する緊急処置
 ・他に有効な治療法がないと判断される血管形成術後の再治療
承認条件
1. 頭蓋内動脈狭窄症の治療に関する十分な知識・経験を有する医師により、同治療に伴う合併症への対応ができる体制が整った医療機関において、本品が使用されるよう、関連学会と連携の上で必要な措置を講じること。
2. 1.に掲げる医師が、適応を遵守し、講習の受講等により、本品を用いた血管内治療に関する手技及び合併症に関する十分な知識を得た上で、本品が用いられるよう、関連学会と連携の上で、必要な措置を講じること。
3. 一定数の症例が集積されるまでの間は、本品を使用する症例全例を対象として。、使用成績調査を行い、経年解析結果を医薬品医療機器総合機構宛て報告するとともに、必要により適切な措置を講じること。


日本脳卒中学会、日本脳神経外科学会、日本脳神経血管内治療学会 適正治療指針のまとめ
1. 治療に際しては、薬事承認を得た機器を用いる。
  現在薬事承認されている頭蓋内動脈ステント(動脈硬化症用)は、Wingspan Stent Systemのみである。
2. 適応は、医療機器の薬事承認条件に基づく。
  頭蓋内主幹動脈狭窄症例に対するWingspan Stent Systemの脳梗塞発症予防効果を検証する目的で行われた無作為化比較試験(SAMMPRIS試験)では、本機器使用群の脳卒中、死亡が積極的内科治療群に比して有意に多かったと報告されている [7,8]。新たな知見が集積されるまでは、頭蓋内主幹動脈狭窄症例の脳梗塞発症予防を目的とした本機器の使用は、他に有効な治療法がないと判断される場合を除き行うべきではない。従ってWingspan Stent Systemは、頭蓋内動脈狭窄症に対するバルーン拡張式血管形成術用カテーテルを用いた経皮的血管形成術において、血管形成術時に生じた血管解離、急性閉塞または切迫閉塞に対する緊急処置(いわゆるrescue stenting)、または他に有効な治療法がないと判断される血管形成術後の再治療に限って使用することが望ましい。
3. 実施医療機関は本機器の使用に必要な設備機器、治療環境を整える必要がある。
  手術室または血管撮影室に適切な血管撮影装置が常設されていること。常時、脳神経外科手術に迅速に対応できる環境を有すること。
4. 実施医は、脳血管内治療専門医が行う必要がある。
  本機器による治療を安全に行うため、実施医は日本脳神経血管内治療学会認定脳血管内治療専門医の資格を有し、頭蓋内血管形成術を5件以上経験していること。また、対象医療機器の研修プログラムを修了していること。
5. 本機器の使用が脳梗塞予防効果を有するとの科学的根拠は未だ得られていないことを踏まえて、本機器を使用すること。
  本機器の使用は他に有効な治療法がないと判断される場合を除き行うべきではなく、またPTAは一定の割合で本機器を使用する可能性がある治療法であることを考慮して実施すること。
脳梗塞の予防を目的とした本機器の使用の安全性と有効性が確認されるまでは、適応の判断に際し本治療を担当しない専門家との協議を行うなど、慎重に判断することを推奨する。
6. 実施医療機関および実施者は、本機器の市販後調査や研究に積極的に協力し、その効果や問題点を明らかにすることに協力する必要がある。
  新しい機器の承認後に行われる市販後調査やその他の臨床研究により、本邦における使用実態を調査し、その安全性や有効性を明らかにする必要がある。
脳梗塞の予防を目的とした本機器の使用の安全性と有効性が確認されるまでは、全例を対象とする市販後臨床研究を実施することが望ましい。


日本脳神経血管内治療学会から
1 Wingspanステントシステムは、その使用全例が市販後調査の対象になっていることに留意し、定められた適応と標準的使用法を遵守し、目標とする治療結果を得るよう努めてください。
2 新しい医療機器の展開に関して、NPO法人日本脳神経血管内治療学会は実施基準の策定や企業の求めに応じて実施医の選定条件や教育方法および内容に関して助言を与えることがありますが、実施医の選定や訓練内容を学会が定めることはありません。
3 今回のWingspanステントシステムの承認にあたっては、経皮的血管形成術(頭蓋内PTA)に関する実態調査を行うことを強く求められており、日本脳神経血管内治療学会学術委員会が中心となって市販後調査と平行して前向き調査を実施する予定です。詳細は別に公告します。何卒宜しくご協力賜りますようお願い申し上げます。


資料
 適正使用について(厚生労働省から)2013.11.22
 日本脳卒中学会から2013.12.20
 3学会適正治療指針2013.12.9